透析室の感情トラブル


透析室の感情トラブル
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 第70号 (2001年10月7日発行)

この本は、雑誌「透析ケア」の2000年冬季増刊号なので、透析に携わっている人であれば、既に読まれている方も多いのではないかと思います。

監修は、この道の第一人者である春木繁一先生です。先生は医師でありながら30年近い透析歴をお持ちになる透析患者でもあります。その他の執筆者として、「やさしいサイコネフロロジー入門」の著者でもあります福西勇夫氏など、豪華なメンバーが様々なケースを想定したトラブルに対するサポートを、実例を挙げてわかりやすく解説されています。

序章の「透析室は”社会の縮図”以上ではないか?」から始まり、第1章「患者さんと透析スタッフのトラブル」、第2章「家族と透析スタッフのトラブル」、第3章「スタッフ同士のトラブル」、第4章「ドクターとナースのトラブル」、第5章「患者さんとドクターのトラブル」、第6章「患者さん同士のトラブル」に分かれます。それぞれの章は、いくつかの小項目からなっています。小項目は、「依存しすぎる患者さんとどうかかわるか」といった日常よく起こり得ると思われる事項から、「訴訟を起こされた場合」という、ちょっと怖いが起こらないとは言い切れない事項、果ては「医療従事者同士の恋愛をめぐるトラブル」などという、当事者になったらおせっかいとしか思えないような事柄まで掲載されています。これを全て読み通すことにより、自分の知らなかった患者さんの心理というものがうかがい知ることができます。

ただ、透析ケアとその関連書籍は看護師さんの色合いが強く、この本も看護師さんを想定して書かれた印象が強いです。「ナースとコメディカルスタッフの間での感情的軋轢」という項目がありますが、内容からタイトルを付けるとすると「ナースと臨床工学技士の軋轢」になってしまいます。栄養士、薬剤師、看護助手など、透析には欠くことができない職種の人について触れられていません。透析室では医師、看護師、臨床工学技士が目立ちますが、その他の職種の人たちがいるからこそ、透析が成り立つと言っても過言ではありません。その辺の人々に対する項目があっても良かったのではないかと思います。

この本は透析室スタッフ、特に看護師さんにとっては4000円以上の価値が十分ありますが、患者さんにとっては正直なところ、それだけの価値が本当にあるのかは疑問です。もし、本屋さんで見る機会があったら、目次にざっと目を通して、気になった部分を読むだけでもいいかと思います。

図書名:透析室の感情トラブル
著者:春木繁一【監修】
価格:4000円(税抜)
発行所:メディカ出版
ISBN:4-89573-979-1  bk1 amazon



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