東京透析物語


東京透析物語
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 第97号 (2002年3月17日発行)

この本は東京の三件茶屋病院院長の大坪公子氏が監修、メディカル・エディターの渡部新太郎氏が編集した、透析患者さんの生の体験談をインタビューやアンケートを通してまとめたものです。実際に透析を受けている患者さんが、何を感じ、どんなことを考えたのか、透析に至る経過、症状、透析をいつ始めようか迷っている患者さんへのメッセージ、仕事、家事、家庭、家族の問題、生活上で工夫していること、心のもちかた、家族への想いなどが書かれています。

第一部の体験談集には37人の方の話が載っています。透析歴10年、20年という長期透析患者さんの話を主体としていますが、中には3年や4年といった、比較的新しい患者さんの話もあります。内容は人それぞれで、透析中の症状や、生活の工夫、合併症のことなど、生の患者さんの言葉が書き連ねられています。第二部のまとめには、透析に対する様々な注意点が、第一部の体験談集の話を基にまとめられています。第三部の付録には、合併症や検査データ、食事療法における注意点などが書かれています。

やはり、メインは体験談集であり、一番読んで欲しい部分でもあります。透析を受けている方が書いた本に、自分の透析経験を書いたものはありますが、複数の患者さんの話をまとめたものは、私の知っている範囲では、この本以外にはないと思います。長期透析患者さんが多いためか、話の内容があまりにも優等生すぎて、ちょっと面白味に欠けるような感じもします。もしかして、劣等生的な話はカットされてしまったのでしょうか。すべて優等生でまとめるよりも、ありのままの姿を出した方が、読み手である透析患者さんや医療従事者の共感を受けることができ、一般の方にも透析患者さんの本当の姿を見せることができるのではないか、と思います。また、専門用語に対する説明がないので、一般の方や、これから透析を受けられる方にとっては分かりにくい部分があると思います。分からない部分については飛ばして読んでも構わないと思います。

監修が透析施設の院長であり、編集が長年医学関係書籍の編集をしていたメディカル・エディターで、明らかな間違いや勘違いについては訂正してあるので、透析関連の間違いは、私が読んだ限りではなかったと思います。発行が1996年3月25日と、ちょっと古いのですが、体験談はそれほど古さは感じられないので、透析を始めたばかりの人や、透析導入を迷っているような人には特にお薦めの1冊です。

図書名:東京透析物語
監修:大坪公子 編集:渡部新太郎
価格:1068円(税抜)
発行所:日本医学出版
ISBN:4-931419-22-4  amazon



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